高齢者が1日に必要なカロリーはどれくらい?
超高齢化社会の日本ですが、高齢者にはいつまでも長生きしてもらいたいものです。しかし長生きの秘訣はやはり食を通して健康を維持することです。
現在高齢者の介護を行っている家族や施設担当者はどんな栄養素を入れて、どれくらいのカロリーを摂取してもらうべきか意識する必要があります。
「公益財団法人 長寿科学振興財団」によると、高齢者が1日に必要なカロリーは以下の通りです。
表1:推定エネルギー必要量(kcal/日) 性別 男性 女性 身体活動レベル※ Ⅰ(低い) Ⅱ(普通) Ⅲ(高い) Ⅰ(低い) Ⅰ(普通) Ⅲ(高い) 50~69歳 2100 2450 2800 1650 1900 2200 70歳以上 1850 2200 2500 1500 1750 2000
身体活動レベルはⅠからⅢに向かうにつれ、高くなります。
目安としては、次の通りです。
- Ⅰが「ほとんど座って過ごすようなレベル」
- Ⅱは「座っていることが多い仕事だけど、ある程度の移動や立っての作業、家事や軽いスポーツなども含まれるレベル」
- Ⅲが「移動や立ち作業が多い仕事をしていて、活発な運動習慣もあるレベル」
個人差はありますが、高齢者はレベルⅠやレベルⅡに該当するケースがほとんどでしょう。ですから1500~2200カロリーくらいが一般的な目安と言えます。
高齢者が1日に必要な栄養素
高齢者が不足しがちな栄養素はたんぱく質です。タンパク質を豊富に含む肉や魚、大豆などを摂取すると良いです。また骨粗しょう症を未然に防ぐためにカルシウムも摂り入れるのは賢明です。
もちろん他の栄養素も必須です。以下に長寿科学振興財団データの示した栄養素の推奨量・目標量を抜粋します。
3大栄養素の基準値
表3:3大栄養素の基準値 栄養素 男性 女性 50~69歳 70歳以上 50~69歳 70歳以上 たんぱく質(g/日) 推奨量 60 60 50 50 脂質(%) 目標量 20~30 20~30 20~30 20~30 飽和脂肪酸(%) 目標量 7 7 7 7 n-6系脂肪酸(g/日) 目安量 10 8 8 7 n-3系脂肪酸(g/日) 目安量 2.4 2.2 2 1.9 炭水化物(%) 目標量 50~65 50~65 50~65 50~65 食物繊維(g/日) 目標量 20以上 19以上 18以上 17以上
ビタミンの基準値
表4:ビタミンの基準値 ビタミンの種類 栄養素 男性 女性 50~69歳 70歳以上 50~69歳 70歳以上 脂溶性ビタミン ビタミンA(㎍RAE/日) 推奨量 850 800 700 650 ビタミンD(㎍/日) 目安量 5.5 5.5 5.5 5.5 ビタミンE(mg/日) 目安量 6.5 6.5 6 6 ビタミンK(㎍/日) 目安量 150 150 150 150 水溶性ビタミン ビタミンB1(mg/日) 推奨量 1.3 1.2 1 0.9 ビタミンB2(mg/日) 推奨量 1.5 1.3 1.1 1.1 ビタミンB6(mg/日) 推奨量 1.4 1.4 1.2 1.2 ビタミンB12(㎍/日) 推奨量 2.4 2.4 2.4 2.4 葉酸(㎍/日) 推奨量 240 240 240 240 パントテン酸(mg/日) 目安量 5 5 5 5 ビオチン(㎍/日) 目安量 50 50 50 50 ナイアシン(mgNE/日) 推奨量 14 13 11 10 ビタミンC(mg/日) 推奨量 100 100 100 100
ミネラルの基準値
表5:ミネラルの基準値 ミネラルの種類 栄養素 男性 女性 50~69歳 70歳以上 50~69歳 70歳以上 多量ミネラル ナトリウム(食塩相当量)(g/日) 目標量 8.0未満 8.0未満 7.0未満 7.0未満 カリウム(mg/日) 目標量 3000以上 3000以上 2600以上 2600以上 カルシウム(mg/日) 推奨量 700 700 650 650 マグネシウム(mg/日) 推奨量 350 320 290 270 リン(mg/日) 目安量 1000 1000 800 800 微量ミネラル 鉄(mg/日) 推奨量 7.5 7 6.5 6 亜鉛(mg/日) 推奨量 10 9 8 7 銅(mg/日) 推奨量 0.9 0.9 0.8 0.7 マンガン(mg/日) 目安量 4 4 3.5 3.5 ヨウ素(㎍/日) 推奨量 130 130 130 130 セレン(㎍/日 推奨量 30 30 25 25 クロム(㎍/日) 目安量 10 10 10 10 モリブデン(㎍/日) 推奨量 25 25 25 20
これらの栄養素をある程度バランスよく介護食に取り込むことで、高齢者の健康を維持しやすくなります。
ただし高齢者によって必要な栄養素やより不足している栄養素は変わってくるので、最終的にはそれぞれの状況に合わせた介護食作りが大事です。
高齢者の食生活をよく観察することが重要
高齢者は色が細くなりやすい傾向がありますが、普段から高齢者がどんなものを食べているか、どれくらい食べているかをよく観察することが大事です。
同じ家に住んでいる場合はまだしも、別々の家に住んでいる場合は目が届きにくいことがあります。
もし普段食べているものがおかゆだけなど、栄養素が偏ったもの、あるいは少ないものである場合、介護食へのシフトが必要になるでしょう。また食欲は運動量とも関係あります。
体を動かさないと筋力が低下し、食欲もあまりわきません。そうなると低栄養になって筋力がさらに落ちてしまう恐れがあります。
このような悪循環を断ち切るには、普段から食生活をよく観察することや、できるだけ適切な運動量をキープするようにサポートしてあげる必要があります。